私は海をだきしめていたい

 

「ねえ、俺、本当に君のことが好きだよ。君は信じてくれないだろうけど、ずっとずっと、君のことが好きなんだよ。そんなこと知ってる?    聞き飽きた?    それでも構わないよ。君は俺が君を好きなことを、ずっと前から知っている。あまつさえそれを利用している。だって君は俺が嫌いだから。そうでしょう?    わかってるよ。君の一挙手一投足は全て演技だ。その目も指の流れも、全部嘘だ。君は君の持っている全てを使って俺を喜ばせておきながら、腹の底では、そんな俺のことを嗤っている。わ、やめろよ。今こうやって、君が俺のことを抱きしめたのも、演技だろ?    俺の肩の上で、見えないけど今君は嘲笑を浮かべているね。見えないけど、俺には見えるよ。え?    なんだって?    君も俺のことが好き?    嘘だね。君のお得意な嘘だ。だって、君は俺のことを絶対に好きにはならないから。なんなら、君は誰のことも好きにならない。好きになれないんだ。だけど君は、誰からも好かれないと気が済まない。今だって君のiPhoneはたくさんの男たちからのLINEの通知でひっきりなしに鳴っている。知らないけど、知ってるよ。君にとって俺は、不特定多数の男の中の内の1人に過ぎないんだ。君は決して満たされない。例えるなら、穴の空いた底抜けバケツだ。だからこうやって、嘘っぱちの好きを振り撒いている。君は淋しい。そしてとても弱くて、可哀想だ。君は誰のことも好きになれない。もちろん俺のことなんて、絶対に好きにならない。ずっと俺の一方的な感情なんだ。だから好きなんだ。だから俺は君のことが好きなんだよ。わかる?    いや、わからなくていいよ。むしろ、君にはわからないでいて欲しい。君と俺が付き合うなんてことは、永遠にないんだ。付き合わないから、君は手に入らないから、君は偶像に成り得るんだ。俺の永遠でいられるんだよ。偶像崇拝なんてのは、一見偶像が人を支配しているように見えて、本当は反対なんだ。偶像からは、意志も心も全て剥ぎ取られるから。偶像じゃなくてアイドルって言えばわかりやすいかな?    だから俺は、偶像崇拝を続けている限り、偶像を支配することができるんだ。だけどひとたび付き合ってしまえば一変、この支配被支配の関係は壊れてしまう。支配対支配に取って代わってしまう。つまり、俺が君に一方的にぶつけていた理想幻想妄想、そして軽蔑に同情、その全てが壊されてしまうんだ。俺はそれがどうしようもなく、怖い。君の中身が見えて、君の本当の中身が俺の幻想を破壊するのが怖いんだよ。くだらないだろ?    仕様もないだろ?     嗤ってくれ。そうそう、それだよ。その笑った瞳の奥の、蔑んだ表情が好きだ。俺が君の上で、だらしない顔して腰を振っている時に見る目と同じ、その目だよ。蔑んだ、憎悪と嫌悪を含んだその目。他の男とする時も、その目をしているんだろ?    いい、いい。言わなくていい。君が他の誰とセックスしようと、俺は構わないんだ。苦しいけど、それでいいんだ。だけど間違っても、誰かに本気になんて、ならないでくれよ。君がこの先誰かと付き合って、結婚することだって、あるかもしれない。だけど本気で好きになんて、ならないでくれ。男なんて、そうやって心の中で馬鹿にして、君は馬鹿なフリをして、演技をして騙し続けていてくれ。本当の心なんて、誰にも見せないでくれ。俺にも見せないでくれ。そうして初めて、俺たちは永遠でいられるんだ。永遠に幸せでいられるんだよ。意味がわからない?    それでいいんだ。それがいいんだ。そんな君だから好きなんだ。ねえ、俺は本当に君が好きなんだよ。俺は君のことが好きだ。返事はいらない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回メス臭い文章を書いてしまったので今回は対極、オス臭い文章を書こうと思ったけど結局、メス臭い文章になってしまっただってわたしメスだもん、男の気持ちなんてわからないしわからなくていいよ